『夜の図書館』は五作の短編をまとめた本です。
まずこれを買った理由は、なんといっても表紙でした。
雰囲気のある絵で目を惹きます。
次に短編集ということで、読みやすそうだなと。
あまり事前情報を集めない僕なので、後から受賞経験がある方が書いてたりしてると知りました。
とりあえず買って良かったと思う出来だったので、次回もあれば買いたいなと思います。
まず一作目『トリップ・クラップ・ガール』神尾アルミ著
女の子が夜の街を歩きながら、現実に向かって毒づく話。
冒頭は不思議な話だなーと思って読み進めていたのだけれど、4P目で話の方向性が変わる。
メインである女の子の自己中っぷりとそれに相容れてくれない世界の公平っぷりがリアリティがあって感じるところは多い。
これは男が書ける類の話じゃないなーとか思う。
ただ4P目に一回話をひっくり返されたことにより生じた猜疑心により、読者として話にひたり切れなかったのが残念なところ。
なのでどうせなら最後まで読者を煙に巻く飄々さがあったらもっとかっこよかったかなとか。
次に二作目『夜方の夢』若本衣織著
ホラー掌編四作で構成された話。
描写が丁寧で光景が絵として浮かぶ。
怖い要素はあるのだけれど、ホラーとしてゾクゾクくるような精神的な恐怖には欠けるように感じた。
多分危険に追い込まれたとして、その後どうなるのかっていう部分が特に煽られてないせいかなあ。
文章がしっかりしてるので、話に展開がある二、三番目の話の方が読んでいて面白いなと思った。
二番目の話はちょっと気持ち悪いけど終わり方としてはよかったと思うし、三番目は全体の雰囲気も良く合って純粋に好きな話だった。
三作目『遊園地のよるに』木々津伊織著
遊園地の警備員が不思議なロボットに会う話。
前に配置された作品からすると文章としてはトーンダウンするのだけれど、良い箸休めになっていると思う。
AIのキャラはもうちょっと描かれたら楽しいかもなーと思ったところで終わってしまうので、少々物足りない感はある。
特にそれでどうなったかの部分は気になるので、こういう終わらせ方にするとしたら逆に途中の部分で盛り上げた方がいいんじゃないかなと。
話のテーマとしては好き。
四作目『女郎花織る蛛将』空木春宵
平安時代をベースにした蜘蛛の糸に魅入られた男が主役の伝奇小説。
はっきりいってこの中だと格が違うと感じる程に面白かった。
キャラの個性付け、ストーリー展開共に文句なし。
最後辺りの嗤う伊右衛門の雰囲気かなあと勝手に思った。
とにかくおすすめの出来。
この冊子買って良かったーと思わされた。
最後に五作目『サクラの木』平山 翔著
サクラの木に憑いてる幽霊と、そんな幽霊が見えるようになってしまった主人公の話。
前の話のグレードが違ったせいかどうしても見劣りが生じてしまうのが残念なので、多分これは中盤に位置した方がベターだったと思う。
ちょっと残念な部分があるが、逆に伸びしろがあるとも言える。
例えば表記ゆれがあるのは統一すれば印象は変わるはずだし、話自体には流れがあるのに盛り上がりが足りないのはちゃんと意識して盛り上げるようにすれば良いかと。
以上、拙いですが一冊分の感想でした。
失礼があるかもしれませんがご容赦していただけるとありがたいです。
丸々一冊分書くと時間がかかるですね……。
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