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文藝散道*お知らせブログ

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三題小説

三題小説:風車、老人、枕

シモソネ作

「風車の花言葉知ってる?」
ぼんやりとした暖色の明かりの中、膝枕の柔らかさを堪能する俺の耳に彼女の声が響く。
「いや、聞いたことがないな」
床の間の花瓶で揺れる薄青がまどろみの中で揺れる。
「呆れた、意味も知らずにこんな花を買ったの?」
「君を見ているようだったからね、それだけだよ」
「……今度調べてみるといいわ」
見上げる先で何故か膨れた顔をしながら彼女は眼を逸らす。
黒髪から覗く赤みが触れたくなる程愛おしかった。
女を買うような老人には過ぎた言葉だと知ったのは、彼女の余生を貰い受けた後の話だ。

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もうエリ作

隔離された村がある。豊かでも人に溢れていたわけでもないが、風車が名物の風光明媚なところだった。
この村を奇病が襲ったのは数年前のことだ。
老化が異常な速度で進む病気は、住人の半数に感染し、更にその数を増そうとしていた。
まだ症状の出ていなかった僕は、感染してしまった母になけなしのお金を持たされ、急いで村の外に出された。
「二度とここには近寄っちゃいけないよ」
母の言葉がまだ耳にこびりついている。

あれから僕は偉い先生に保護され、研究のお手伝いをしてきた。
村には研究機関が入り、住人の保護をしているらしいが、老人になってしまった住人は、もうかなりの数が亡くなってしまったと聞いた。
その中に母の名前はまだなかった。
そして今日、やっと母との約束を破ることができる。

村から出る時に使った線路は廃線になってしまっていた。線路の枕木をゆっくりと踏んで僕は歩く。
村に着くとその寂れ具合に目を疑った。
誰も使わなくなってしまった風車が悲しそうに軋んだ音を上げている。
実家に戻り、年老いた老婆の手を取る。
「ただいま」
皺の奥に隠れてしまった目が僕を見て涙をたたえた。
瞳に映っている年老いた男。
「お帰りなさい」
母の声を耳に僕は目を閉じた。
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